告訴・損害賠償請求について
(1)損害賠償請求について
誹謗中傷によって名誉を棄損された被害者は加害者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることが一般的です(民法710条)。
この場合の「損害」は精神的損害が中心となります。
また、金銭賠償だけでは棄損された名誉が回復されない場合には、名誉を回復するのに適当な処分(例・謝罪広告など)を命じることが認められています(民法723条)。
(2)名誉棄損の慰謝料の金額の相場について
名誉棄損の慰謝料の金額は一般に低廉でありメディアによる名誉棄損事件の場合、裁判所による平均認容額がおおむね100万円であることによる、いわゆる「100万円ルール」が裁判の実務相場とも言われてきました。
ただ、近年は名誉棄損の慰謝料の定型化や水準を上げていこうと試みる動きがあり、マスコミによる著名人に対する名誉棄損事件では500万円前後の高額な慰謝料を認める裁判例も出てきています。
とはいえ慰謝料の低廉化の傾向はそれほど変わっていないというのが私の印象です。
(3)加害者に対して処罰を求める場合について
誹謗中傷の内容があまりに悪質であったり、執拗であったりして業務に支障が生じているような場合などは、刑事告訴ということも考えられます。
この場合、被害者は捜査機関に対して「告訴」(犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求めること)をする必要があります。告訴は被疑者(発信者)が特定されていない段階(被疑者不詳)でも可能です。
なお、名誉毀損罪と侮辱罪は「親告罪」とされています。親告罪とは、被害者からの告訴がなければ公訴提起(刑事事件にかけること)ができません。これは裁判によって事実が明るみになることによって、被害者が不利益をこうむるおそれがあるからです。