⑤よくある法律相談(相続編)

遺産分割に付随する問題の取り扱いについて

2014-09-11

遺産分割事件では、被相続人の死亡に伴って様々な付随問題が持ち込まれることが多いです。

具体的には、使途不明金、葬儀費用の清算、遺産収益の分配、相続債務の整理、遺言執行、老親の扶養、祭祀承継といったものが挙げられるでしょうか。

いずれの問題も付随問題とはいえ遺族にとって重要な問題であって、これらの問題も遺産分割手続のなかで一気に解決できるに越したことはありません。

ですが、遺産分割手続は本来、被相続人の遺産(積極財産)を相続分に応じて分配する手続きである以上、付随問題に関して遺産分割調停(話し合い)で話し合いがまとまらず、遺産分割審判(お上による裁き)に移行すると判断してもらえない事項が出てきます。

つまり、付随問題を解決してもらうために別途、民事訴訟や家事調停・審判を申し立てる必要があるということです。

東京の家庭裁判所では付随問題が原因で遺産分割調停が長引くのを防ぐために、こうした付随問題を遺産分割調停のなかで論じる期日をおおむね3期日程度(3回)とし、その間、話し合いでまとまらなければ以後、その問題を調停で取り上げない運用がとられているようです。

これは遺産分割本来の問題をしっかり解決しようという意思の表れといえるでしょう。

とはいえ、付随問題の解決について合意ができないからといって、当然に遺産分割調停を取り下げて訴訟を行うのは早計といえるでしょう。

付随問題は別途訴訟等の手続きで解決すべき事項であるとはいえ、それが解決されなくても遺産分割調停や審判をするには法的に何ら差支えありません。

むろん、付随問題の解決を先行したいという気持ちから、遺産分割調停を取り下げるということはあり得ますが、民事訴訟等と遺産分割調停を同時進行で進めていくことは可能とされています。

なお、相続人の範囲や遺産の範囲、遺言の効力といった問題は遺産分割の付随問題ではなく「前提問題」ですので、これらの問題が争われている場合、別途民事訴訟などで解決しない限りは調停も審判もできないことになります。

(参考文献:判タ1375.p67-)

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