③よくある法律相談(不動産トラブル編)

相続放棄と空き家の管理。

2015-09-02

多額の負債を抱えたまま亡くなった被相続人の相続財産について相談を受けた際に「相続放棄」の検討を助言することは多いです。

ですがそこから一歩進んで「相続放棄をすれば被相続人の相続財産について何も責任を負わなくて良いんだよ。」と助言することは慎重にならざるを得ません。

それはなぜでしょうか?

相続放棄をすれば相続財産と無関係でいられる、と思われている方も多いでしょう。

今回のコラムでは私たち一般私人の間を規律する基本法である「民法」をもとにして相続放棄と空き家の問題について考えてみたいと思います。

まず、結論からいうと相続放棄をしたからといって被相続人の相続財産から生じる問題について完全に責任を免れるわけではありません。

民法940条
相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。

上記条文によると相続放棄をした後も被相続人の相続財産を管理する義務を負う場合がありそうです。

とはいえ、相続放棄をした方からすれば管理義務の具体的な内容として相続財産である空き家の老朽化が進んできたからといって補修工事を行う義務まであるとすると何のために相続放棄をしたのか分からないことになってしまいます。

それゆえ「私は相続放棄をしたのだから関係ない。」「お金もないし管理する時間もない。」「だから故人の空き家なんて知らない」と言いたくなる気持ちは理解できます。

また「私はずぼらだし、自分の財産はいい加減に管理しているから空き家も同じように別に放置でいいでしょう。」と主張される方もいるかもしれません。

ですが「自己の財産におけるのと同一の注意」の内容は相続放棄をした者の管理能力を基準にするのではなく一般通常人を基準にすべきであるとされています。

そうすると、倒壊寸前の空き家を放置したままにしておくことで通行人などに被害がでた場合、ケースによっては損害賠償責任を負うことはあり得ると考えます。

それでは最後に相続放棄をする方はどうすれば良いのか?という疑問がわきます。

一つの手段としては相続財産管理人の選任申立てを行い(費用は申立人が負担することを覚悟しておくこと)、相続財産の管理義務を免れることが考えられます。

しかし、個人的には問題のたらい回しのような気がしてなりませんし、仮に私が相続財産管理人になった場合を考えると頭が痛くなりそうです。

私としては、空き家(ないし空き家になる予定の建物)をお持ちの方に対して管理方針をきちんと策定しておいて欲しいと心底思います。

※今年施行された空き家対策特別措置法に関しては今後、コラムで紹介していく予定です。

無断駐車の撃退方法②

2015-06-09

さて、前回の続きです。

無断駐車の対策として「無断駐車は発見次第、金○○万円貰い受けます。」のような看板を見かけることがあります。

現実問題として無断駐車をした人に対して看板に記載された金額を請求して取り立てることはできるのでしょうか??

これはかなりハードルが高いと言わざるを得ません。

まず上記のような看板があるからといって当然、無断駐車をした人との間で金○○万円を支払ってもらう約束が成立している、というのは困難でしょう。

状況からして無断駐車している人間が本気で金○○万円を支払う意思があるとは思えません。

看板がたとえ目に入っていたとしても、看板記載の内容を承諾した、とは直ちにならないでしょう。

これは飲食店の看板(お勧めメニュー)を見て店内に入ったからといって、直ちに看板のメニューを注文することにはならない、ということに似ています。

そうすると、無断駐車した人間はルールを無視して利益を得ているのと同じじゃないか、ズルイ!という批判が当然に起こります。

ただ、まったく何も請求ができない、というわけではありません。

例えば土地の持ち主は近隣のコインパーキングの駐車料金を調べて、無断駐車時間に対応した損害を請求するということが考えられます。

他にも実害が発生しているのであれば請求することは筋論からいえば間違っていません。

でも1時間程度、無断駐車をされたからといって通常は5万円だの10万円の損害が発生することはありませんよね??

あくまでも現実に受けた損害以上のものは請求できない、というのが大原則となります。

・・・・(゜-゜)

ただですね、私個人の思いとしては上記の結論ですとコインパーキング相当のお金を払えばどこにだって無断駐車をして良いという考えに結び付きそうで嫌なんですよ。

というわけで当事務所の駐車場に無断駐車した車両に対しては、その周囲を職員の車両で囲んでしまうという方法で対抗しようと思いました。

無断

当事務所の管理地なんですからどこに駐車しようが自由ですよね。

そのまま半日ほど放置しておくか、「どけて欲しい。」と頼んできたら「な、なんで?ぼ、僕、何か悪いことした?」と小一時間ほど会話を楽しむのも一興です。

で、肝心の事務所駐車場にとめられた無断駐車車両なんですが上記計画を実行に移そうと外に出た瞬間に車の持ち主が戻ってこられました。

申し訳ないと繰り返し謝られたので、「一言ことわってください。」とだけ言って終わりました。

実際問題としては構っている時間がもったいないのですから、無断駐車をされないようにカラーコーンなどで対策をしようと思います。

色々と考えましたが、請求をする、しないはともかくとして無断駐車に対しては厳しい態度で臨む旨の警告看板や文書で対抗するのが現実的な案といえるでしょうね。

※2回にわたり連載した無断駐車対策に関する本コラムは色々なところから反響をよんでおり私も嬉しい限りです。

私が採ろうとした周囲を車両で囲む作戦は法的にはグレーゾーンであってお勧めはしておりません。私もカッカきていました。反省しきりです。

ちなみに今は営業時間外になるとカラーコーンを置いて入口を封鎖しています。(2015.7.8追記)

無断駐車の撃退方法①

2015-06-03

私の事務所では先月から第二駐車場を設けております。

ただ、コッソリと弁護士に相談したい方もいらっしゃるということで事務所の看板はあえて出しておりません。

一応、杭とロープで駐車場の敷地を囲い管理地であることをアピールしていますが効果があるのか疑問でした。

そうしたら案の定、当事務所の駐車場を無断で使用する車両が現れ始めました。

実害がないのなら地域住民サービスだと思ってほおっておくかな、、、という考えも一瞬よぎりました。

ですがクセになっては困りますし、駐車場でのトラブルの種にもなります。お客さんにも迷惑がかかるかもしれません。

なにより我が物顔で止まっている車をみるのが気に食わないんですよね。

なのでこれを撃退しなければと思いました。

駐車

さて、私有地に無断で駐車されお困りになっている方は少なくないかと思います。

私有地に無断でとまっている車を取締まるために警察を呼んでもまず動いてくれないでしょう。

理屈上は何らかの刑事罰に触れると構成できなくもないのでしょうけど警察はアテにはできません。

であればどうするか??

私が法律のことを何も知らない一般人であれば、まず自力でなんとかすることを考えていたでしょうね。

それも過激なことをしていたかもしれません。

例えば即、レッカーを呼んで100キロほど離れた山中にでも置いてきてもらい自然に還す。

タイヤを全て外して自走不能にする。

車両の周囲に落とし穴を掘っておいて決定的瞬間を撮影する。

いずれも胸がスカッとするかもしれません。少なくとも私はします。

ですが、、、皆さんはこのような行為に絶対に出てはいけません!

幾らルールを守らない持ち主の車であっても所有者の同意なく好き勝手にはできません。

法律の世界では「自力救済禁止の原則」という考え方があります。

自力救済とは分かり易くいうと権利を有する者が、その権利を侵害された場合に、法律の定める手続によらないで、実力行使によって自身の権利を回復・実現することをいいます。

自力救済を推奨すると弱肉強食の世の中になってしまいますよね?司法制度がきちんと整っている国なんだからきちんと手順は踏みましょう、というのが原則なのです。

本件の場合ですと無断で土地を使われている地権者は違法車両をどけるために法律で定める手続きを採らなくてはなりません。

私が考えた解決案は違法駐車車両の持ち主から逆に損害賠償請求をされる可能性がありますし、下手すれば刑事罰の対象にもなりかねません。

そうすると違法駐車をされた場合を考えるより、違法駐車をされないための工夫が必要となります。

私の事務所駐車場で起こった事件の顛末も含めてこの続きはまた今度ということで(゜-゜)

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