①よくある法律相談(離婚・男女トラブル編)

離婚後、婚姻前の氏に戻りたい。

2016-03-28

離婚をしてからある程度、期間が経過した後に、「氏」(苗字のことです。)を婚姻前に戻したいのですが、、、といった相談を受けることがあります。

こうした悩みをお持ちの方は男性よりも女性の方が圧倒的に多い印象を受けます。これは我が国においては婚姻時に夫の氏を名乗るケースが圧倒的に多いという現状からくるものだと思われます。

さて、法律上は、離婚後は婚姻前の氏に戻るのが原則となっていますが、離婚後3か月以内であれば法律の定めに従い役場に届け出ることによって婚姻時の「氏」を引き続き名乗ることができます。

裏を返せば離婚の際に、婚姻時の氏を引き続き名乗る手続きさえとらなければ婚姻前の氏に戻るということです。

ここまではとりたてて難しい話ではありません。

問題は「離婚後、婚姻時の氏を名乗る手続きをとって生活をしていたものの、やっぱり婚姻前の氏に戻したい。」、と思うようになった場合です。

こうした場合、氏を戻す方法の一つとして家庭裁判所から「氏の変更許可」の審判(ご判断)をもらうことが考えられます。

大まかな流れとしては以下の通りです。

 ①裁判所に氏の変更を許可してもらう。
  ※戸籍謄本、印紙800円、切手等が必要となります。
   詳しくは申立人の住所地にある家庭裁判所にお問い合わせください。
 
           ↓

 ②申立てをされた方の本籍地又は住所地の役場に氏の変更の届出を行う。
  ※届出の際に必要となる書類は各役場にお問い合わせください。

それでは家庭裁判所は「ほいほ~い。りょうか~い♪」と二つ返事で「氏の変更許可」を出してくれるものでしょうか??

当然、家庭裁判所はそんな、かる~いところではありません。

法律上、氏の変更には「やむを得ない事由」が必要とされています(戸籍法107条)。

法律書などを読むと「やむを得ない事由」の代表例としては珍名や難解な読み、通称を永年に亘って使っている等が挙げられています。

そして珍名等によって申立人が不利益を被っているので氏の変更はやむを得ない、と書式例なんかには書いてあります。

珍名や難解な読みなんかは誰がみてもその問題点を把握しやすいですよね(これを「客観性」があるといいます。)

一方、離婚後、3か月を経過してからやっぱり婚姻前の氏に戻りたいというケースの場合は、

「離婚当時は周囲に離婚したことを知られたくなかったので婚姻時の苗字を名乗ったけど、その心配はなくなった。」

「離婚時は子どものことを考え苗字をそのままにしておいた。けれど子どもが成長し学校も変わるので良い機会だと思った。」

「実家の両親と同居しているが苗字が違うのは世間体が悪い。」

「婚姻時の苗字を名乗ることで、元配偶者やその親族から嫌がらせを受けている。」

といった主観的な理由(要するに「その人にしか分からない気持ちの問題」)が背景にあるように思います。

こうした「離婚時に抱えていた問題が解消されたから。」という理由が、氏を変更する「やむを得ない事由」にあたるのかは、やはり当該問題の中身にもよるでしょう。

また、「一度婚姻時の氏を名乗ると決めたのだから、婚姻前の氏に戻すにはそれなりの客観的な理由が要りますよ。」という厳格な立場と、「婚姻前の氏に戻るのが原則なのだから、主観的な理由であっても、そこは一般の氏の変更よりは緩やかに解釈してOKすれば良いじゃないか。」という立場のどちらに寄るかで判断が分かれるところでしょう。

過去の裁判例をみると、厳格な立場から判断したもの、緩やかな立場から判断したもの、それぞれ見られますが、参考事例として「やむを得ない事由」を緩やかに解釈する立場にたって判断を下した裁判例をご紹介します。

このケースでは離婚後も夫の氏を名乗って生活を続け、約11年が経過していたものの、実家の両親と暮らすなかで何かと支障が生じるので氏の変更許可の申立てを行い、裁判所はこれを認めた、というものです(大阪高裁平成3年9月4日決定)。

個人的な見解ですが、民法の原則どおり婚姻前の氏に戻るのだから、婚姻前の氏に戻る場合は緩やかに認めてもいいじゃないか、と思います。

最後はもちろんケースバイケースですが、①離婚当時、氏に関してご自身が抱えていた問題点、②そしてそれが今になって解消されるに至り、③氏を変更しても社会生活上、周囲に迷惑はかからない、といった事情を具体的に主張していくことになるのでしょう。

勝手に出て行った妻(夫)に対する生活費の支払いについて。

2015-07-01

ある日、あなたが自宅に帰ると机の上に「もうあなたとはやっていけません。」「探さないでください。」との書置きが残されていました。

いつもなら寝床で可愛く寝息を立てている子どもの姿もありません。

茫然自失の貴方に追い打ちをかけるように配偶者からすぐに離婚協議の申入書が届きました。

そこには離婚が成立するまでの生活費を支払うように書いてありました。

落ち着きを取り戻した貴方は段々と腹が立ってきました。

「なんで話し合いもせずに出て行った配偶者に生活費を払わないといけないんだ!」「納得いかない!」そんな心の声が駄々漏れです。

本件のケースように夫婦が別居に至った場合でも婚姻生活は継続しておりますので、各自の生活費や子どもの養育費は夫婦がお互いに分担しなくてはなりません。

なお、このコラムでは各自の生活費や子どもの養育費をまとめて「婚姻費用」と呼ぶことにします。

婚姻費用は法律上、各自の資産、収入その他一切の事情を考慮して分担することとされていますが(民法760条)、実務上は婚姻費用の算定表が重要な参考資料として用いられています。

それではご相談者の方が最も不満に思っているであろう「別居に至る経緯」は、婚姻費用の分担額に影響を与えるのでしょうか?

答えはYESでもあり、NOでもあります。まあ早い話がケースバイケースですね(゜-゜)

夫婦は本来、同居してお互いに助け合って生活していく法律上の義務があります(民法752条)。

婚姻費用を分担する義務は夫婦の同居義務・扶助義務が姿・形を変えたものだといえます。

そうすると不倫相手と駆け落ちしたり、家族を捨てて自分探しの旅に出るなど夫婦の同居義務・扶助義務に反してやりたい放題やっている者からの婚姻費用の請求を認めるというのは筋が通らない話です。

上記のように婚姻費用を請求する側がもっぱら別居の原因を作ったような場合には、婚姻費用が減額されたり、それこそ事情次第では婚姻費用の請求が認められない場合もあります。

もっとも通常は別居に至る原因に子どもは無関係ですから、婚姻費用の内、子どもの養育に関する費用は分担を免れることはできません。

そんなわけで本件のケースでは別居の原因はもっぱら相手にあるとして、子どもの養育費を除いた上で、生活費の負担を拒否するという選択肢がとれるかもしれません。

ただ私であれば、よっぽどの事情がない限りは算定表を参考にして適正妥当な金額を算出し、当該金額をキッチリ支払っておいた方が良い、と助言すると思います。

私の経験上、その方が長い目で見たときに紛争の早期解決に結びついたり、離婚という結末を回避するきっかけになることがあるからです。

何も一から十まで我慢しろと言っているわけではありません。

勝手に出て行かれて面白くないという気持ちはよく分かりますが、相手に対する不満を発散する方向を間違えてはいけない、と私は言いたいのです。

不貞(不倫)問題の解決までの流れ④~請求する側の話~

2015-06-23

貴方は配偶者の浮気を疑い、問い詰めたところ、配偶者は狼狽しながら謝罪をしてきました。

貴方はカッとなって配偶者を責め、白紙を差し出して「ここに私に対する謝罪の気持ちを書きなさい!」と迫りました。

貴方は配偶者の自認書を持って浮気相手を呼び出し対峙することにしました。

貴方:ここに私の配偶者が浮気を認めた謝罪文があります。

浮気相手:え?その紙を見せてください。しげしげ・・

貴方:往生際が悪いですよ!大人しく浮気を認めなさい。

浮気相手:申し訳ないですが、浮気をした事実はありません。

貴方:なんですって?よく読んでみなさいよ!

浮気相手:だって、ここには「貴方を傷つける行為をしたことを深く謝罪します。」とあるだけですよ?浮気の「う」の字もでてきませんよね?

貴方:そ、そんな言い訳通じはずないでしょ!

浮気相手:確かに私は貴方の配偶者さんと一緒に食事に行ったりして、誤解を招きました。その点は謝罪します。どうもすみませんでした。

貴方:絶句。

さて、前回のコラムでは配偶者が浮気を認めたときに証拠化することの大切さをお伝えしました。

今回は浮気を自白したときに一筆とっておく際の注意点をお話します。

冒頭のやりとりを読まれて、どこに問題であったのかは分かりますか?

そうです。浮気の有無はともかく謝罪文の内容が抽象的すぎて配偶者が一体、何の事実関係を認めたのか良くわからないのです。

私の経験上、たとえ貴方が浮気を認めた書面だと思っていてもその内容を冷静になってよく読んでみると非常に抽象的な記載になっているものが散見されます。

例えば「○○を傷つけたことを認める。」「不適切な行為があったことを認める。」といったものです。

ひどいものになると「誤解を与える行動をとったことを謝罪する。」のようなものもあります。「誤解」はシロが前提ですよね??

たとえ抽象的な記載であっても通常は書面の文脈と状況から判断して浮気を認めたとしか思えないものの方が多いですし、大概は自認書を書いた段階で観念して当該書面の出番がまったくない場合もあります。

ただ件数としてそう多くはないのですが、事の真偽のほどはともかくとして、後に浮気を認めた文書ではないとして不貞の有無が徹底的に争われる場合があります。

自認書等に一筆もらう際の注意点は「いつ(から)」「誰と」「どこで」「何をした」のか、明確に記載してもらうことです。

なかには用意した自認書に署名押印をして送り返すよう求めるパターンや経緯書を書くことを求めるパターンもありますが、相手に考える時間や友人などに相談する時間を与えることにもなります。

私ならとりあえず自白した段階で簡単な内容のもので構わないので一筆もらっておきますね。

また、後になって浮気に関する自認書を書いた事実は認めるが「無理やり書かせられた。」「場を収めるためには書くしかなかった。」などの反論を防ぐためにもボイスレコーダーで一筆書いてもらう際の状況を録音しておくのが無難でしょう。

もちろん浮気の事実がないのに無理やり自認書を書かせることは論外です。相手に対する怒りから言葉がきつくなるのは仕方ない側面もありますが、下手すれば強要あるいは脅迫と受け取られかねません。

この辺のさじ加減は難しいですが、過去の裁判例で不貞行為に関する示談契約が脅迫されたものであると主張され問題となった案件(東京地裁判決H18.9.8)が見つかったので参考にみてみましょう。

浮気相手の被告は、請求をした貴方(原告)に対して

「~(略)~被告に対し,金銭的要求をするようになり,「裁判になってもいいのか。」「裁判になれば仕事を休んで秋田まで来てもらうことになる。」「あなたに決定権はないんだ。」などと脅かされ,冷静に判断する暇もなく,金銭支払を強制され続け,平成17年5月28日の本件示談契約締結の際にも,延々約3時間にわたり被告に対して威圧的な態度をとり続けた。」「このような経緯の中で,人生経験豊かな8歳年上の原告に威迫されれば,弱い立場の被告にしてみれば,強迫に当たるというべきであり,本件示談契約は,原告の強迫により締結させられたものである。」

と主張して示談契約の成立に納得がいかないとして争ってきました。

これに対して東京地裁は、

「示談当日の原告の言動について検討するに,上記1で認定・判断したとおり,本件では,被告は原告に対して不貞行為による損害賠償責任を負っていたのであり,その示談のために話し合いの機会を持った場面であることを踏まえて考えると,話し合いの内容によって,場合により,原告において,多少威圧的な言葉遣いとなるのはやむを得ないことであって,このような言動は社会的相当性の範囲内の行為と認めるのが相当であるところ,示談当日のやり取りを録音したテープの反訳書(甲7の1)の内容を見ても,原告の言動に,社会的相当性を逸脱した威迫行為とまで評価すべきものは全く見あたらない。」

と被告の反論を認めませんでした。浮気に関する話し合いの場では紳士的な態度に終始するのは難しい、といういわば当たり前のことを踏まえた妥当な判決かと思います。

~次回に続く~

不貞(不倫)問題の解決までの流れ③~請求する側の話~

2015-06-18

ここはXさんの家。

深夜になにやら怒鳴り声が聞こえてきます。

このメールにある○○○って誰?

浮気ね!絶対、許さない。

この書面に「私は○○○と浮気をしました。」と一筆書きなさい(怒)バンバン、バキッ(机を叩き壊す音)

わ、わかりました(泣)サラサラサラ・・・

これで言い逃れできないわね。ふぅ(安堵のため息)

今回のコラムから配偶者あるいはその浮気相手が不倫(不貞)を自白した場合、その後の対応の注意点をお話していきたいと思います。

まず不倫(不貞)は通常、密室で行われるため、たとえラブホテルに入る写真を抑えられたとしても「性行為はしていない。」と反論されるケースがあるのは先日のコラムで書いたとおりです。

そうすると「自白」は不倫(不貞)をダイレクトに証明するものとして極めて有効といえます。

私の経験上、不倫(不貞)の自白がなされたケースでは、その後の対応として以下の①~③(あるいはその複合型)のパターンになることが多いです。

①相手は浮気を認めたものの、何も証拠を残していないパターン。

②自認書、経緯書、念書といった名目の書面に「○○と浮気をしたのは間違いありません。」と一筆とっておくパターン。

③ボイスレコーダーで浮気の自白を録音しておくパターン。

まず①自白を証拠化しておかない、というのは一番最悪な選択肢です。

浮気がばれた時点で潔い対応をされる方も中にはいらっしゃるのでしょうが残念ながら少数派ですし、「そんな人はまずいない。」というのが個人的な感想です。

だいたいは自身の責任を少しでも軽くするために浮気をした時期や回数を偽って申告したり、ひどいケースでは後になって「浮気は認めていない。そんなことは言っていない。」と供述を変遷させる方もいらっしゃいます。

一度浮気を認めたのに!と怒っても後の祭りです。最後は言った言わないの水掛け論になってしまいます。

裁判になった場合、不倫(不貞)があった事実を証明する責任は請求する側が負っています。

水掛け論に陥ると真偽不明であるとして請求をする側が不利益を被ってしまいます。

自白の証拠化は必須である、と肝に銘じてください。

次に「浮気」という言葉は実にいろいろな意味を含んでいます。

人によっては一緒に食事に行ったり、SNSで連絡を取り合うことも浮気だと思われ方もいるでしょう。

また、相手方が「浮気」という言葉を使って非を認めたとしても、後になって浮気の意味内容について「○○の意味だった。」とか「××までしかしていない。」と言われてしまっては元も子もありません。

相手を問い詰めるときは「浮気」という言葉の中身をきちんと明らかにすべきです。

私に言わせると浮気を自白した相手に一番に確認すべきは「肉体関係の有無」です。

生々しい話ですし、相手への信頼が残っていたりすると無意識に確認することを避けてしまうかもしれません。

分からない話ではありませんが、法律の世界では「不貞」≒肉体関係とされている以上は確認は必須なのです。

次回のコラムでは②一筆をとる際の注意点をお伝えしたいと思います。

不貞(不倫)問題の解決までの流れ②~請求する側の話~

2015-06-13

あなたは配偶者の浮気を疑い、探偵会社(興信所)に浮気の調査を頼みました。

数週間が経過し、調査結果は真っ黒でした。

あなたは絶句し、頭がクラクラしてきました。

興信所の調査報告書は浮気の証拠の代表的なものです。

私もそれなりの数の調査報告書を見ておりますが、素人目にはどれも似たような体裁と内容(行動記録・時間・写真など)になっています。

ただ調査費用に幾らかかったのかを聞いてみると同じような調査内容でも結構な差があったりもします。

「この調査期間とこの結果で○○円は高いなあ。」とか内心で思うこともありますが、もちろん口には出しません。

興信所も事前に料金を明示しているところもあれば、追加でどんどん費用が発生して気が付けば損害賠償金よりもかかってしまう、という場合もあります。

調査費用は全額、浮気相手から回収すればよい、という発想は甚だ甘いですし不確定な要素が多すぎるので、興信所を利用するかどうかは費用の面からもよく検討してください。

さて興信所の報告書を読むと配偶者とその浮気相手がラブホテルに入っていくシーンがバッチリ撮影されていたとします。

普通の人であれば浮気を確信するでしょうし、不貞の有無については有利に戦いを進めることがでしょう。

ただ本来、密室で何が行われているのかは当事者を除けば神様にしか分からないはずです。密室といってもラブホテルや自宅、車内とさまざまですので、肉体関係があることをどれだけ窺わせる場所なのかが重要となります。

今回、検討するケースはラブホテルに入る写真ですが、「浮気相手と一緒に食事をした後、自宅まで送ろうとしたが相手の具合が悪くなった。」「休憩をとるためにホテルに二人で入った。」「性行為はしていない。」といった類の反論が出てくるケースがあります。

一緒にいる相手の具合が悪くなれば心配になりますし、「休憩」という派手なネオンが目についたので介抱場所を確保するための咄嗟の判断であった、だから二人でホテルに入ることは自然なことなんだ、と言いたいのでしょう。

ですがなかなかに苦しい主張ですし、これを素直に信じる方は少数派でしょう。

似たようなケースの裁判例でも裁判所は上記反論を「総じてそれ自体不自然である」とバッサリ切り捨てています。

弁護士がついているのにそのような不自然な主張をするのは何故なのか?と疑問に思われる方もいるかもしれません。

これは真実そうであるケースもあれば、弁護士は所詮代理人ですのでクライアントの言い分を無視できなかったり、減額を目的とするなどいろんな事情が考えられます。

なので請求する側は相手方の不自然な反論にカッとならないでうまく受け流してください。

最後のまとめになりますが刑事事件で「自白は証拠の王様」といわれていますが、私に言わせると不貞行為の事件では自白なんかより「密会現場の写真ないし映像こそ証拠の王様。但し、結構なお金がかかる。」ですね。

次回に続く。

不貞(不倫)問題の解決までの流れⅡ~請求をされる側の話~

2015-06-12

浮気が原因でお金を請求される側のコラム第2弾です。

ある日、あなたの携帯電話に着信があります。番号をみると浮気相手でした。

ワクワクしながら電話に出ると知らない人の声で「○×の配偶者ですけど。」と言われました。

あなたの思考は完全に止まります。

途中の会話は記憶に残っておらず「弁護士から連絡がいくから。」という最後のセリフだけが頭の中をリフレインしています。

こうした場合、電話を切った貴方は事態が呑み込めず混乱すること必至でしょう。

そして、時間がたつにつれ「どうやって自分の名前や住所を特定したのだろう。」若しくは「特定するのだろう。」という疑問がわいてきます。

今回は「どうやって請求する側は氏名や住所を特定するのか。」という観点からお話をしたいと思います。

たとえ弁護士であっても、交渉相手の氏名や住所が特定できなければ何もできません。

浮気相手の氏名や住所が特定されていない状況下で法律相談を受ける場合ももちろんあります。

そうした場合、弁護士はその持てる権限を適正に行使して交渉相手の特定を試みます。

当職の場合、たとえ請求する側の依頼者が「請求相手は○×に住む△□という人物です。」と言っても鵜呑みにはしません。裏取り調査をきっちりとします。

これは依頼者を信用していないからではなく「請求する相手や住所が違っていた。」という最悪の事態を避けるためには必要なことだからです。

私の経験上、以下の①~⑦のパターンと弁護士の権限・ノウハウを組み合わせ、費用対効果の観点も踏まえて相手方の氏名や住所を特定していきます。

①浮気の相手方が氏名・住所を教えるパターン
 ※この場合、相手方が浮気を自白しているケースが多いです。

②興信所の調査によって氏名・住所が特定されてしまっているパターン

③メールやSNSの内容から氏名・住所を特定するパターン

④組織内(会社、サークル等)の名簿から氏名・住所を特定するパターン

⑤地元の友人など、もとからの知り合いで氏名・住所を知っているパターン

⑥密会に使用している車両の登録情報から氏名・住所を割り出すパターン

⑦携帯電話の契約者情報から氏名・住所を特定するパターン

※なお浮気相手の住所の特定だけをやってほしい、という相談者の方も一定数いらっしゃいますが当事務所ではこれを固くお断りしております。

請求する側が秘密裏に浮気の証拠固めをしているときに、浮気相手の住所・氏名の特定に意外に手こずる場面もあります。

だからといって請求をされる側は氏名や住所がばれていないから逃げ切れるだろう、のような甘い考えはお持ちにならない方がよろしいでしょう。

次回に続く。

不貞(不倫)問題の解決までの流れⅠ~請求をされる側の話~

2015-06-11

実は異性と浮気をしていまして、それがかくかく云々して配偶者にばれました。

浮気相手の配偶者に私の存在がばれました。

典型的な不倫にまつわる法律相談、それも浮気がばれた方の冒頭部分はだいたいこのような感じで入ります。

そして話をよくよく聞いていくと、

幾らお金を支払わないといけないのですか?

いつ請求がくるのでしょうか?

これから先、どうなっていくのでしょうか?

という質問に着地することが多いです。

このコラムでは請求される側の立場から事件が解決するまでの流れを追っていきたいと思います。

本題に入る前にちょっと横道に逸れますが、当事務所では以下の①と②の案件は基本的に受任しません。

①浮気をした事実があるのにこれを否定して解決して欲しい、とおっしゃる場合。

②「浮気は誓ってしていない。」「誤解である。」と言われても、事実関係や証拠を踏まえて私が納得しない場合。

①の案件を私が受けないのは単に気に食わないからです。浮気がバレた以上は腹をくくってください。

②の案件を私が受けないのは、そこそこ甘い私を説得できない時点で本件は詰んでいると思うからです。

さて浮気がばれて請求される側の立場の方に知っておいて欲しい第1のポイントは「お金を請求される方が楽。」だということです。

どういうこと?なんで?金をとられるのに何が楽なの?という疑問をもたれた方もおられるでしょう。

ですが考えてみてください。

配偶者に浮気がばれた後、配偶者の様子が平素と変わらなかったら不思議あるいは不気味に思いませんか?

怒ると怖い配偶者が、浮気がバレた後に笑みを浮かべながら美味しそうな料理を作ってくれたとき貴方は箸をつけますか?

むしろカンカンに怒ってくれた方が気持ちは楽だと思います。

また、浮気相手から「配偶者にばれた。」「連絡はもうとらないでおこう。」と言われ、それっきりで放置された場合を考えてください。

今後どうなるか不安になりませんか?

請求をされる側の難しいところは受け身にならざるを得ないということです。

請求をする側は権利ですから請求をするもしないも自由です。極端な話ずっと放置しておいて皆が忘れた頃に請求をすることだって可能です。

その間、請求される側は毎日、ポストをみていつ請求書が届くのかを心配しながら暮らすことになります。

まして浮気をした自分にも家族がいる場合、それも浮気をした事実を話していない場合は毎日、気が気でないでしょう。

ですので私なんかに言わせると、例え法外なものであったとしても請求をしてくれた方が、ずっと放置されているよりはよっぽど良いということになります。

「請求をされる=解決に向けた交渉のとっかかりができる」、とポジティブに考えてください。

なお、家族にバレないように処理して欲しいという相談をたまに受けることがあります。

気持ちはよく理解できますが、いつかはバレると思ったほうが良いです。

たとえ内緒で示談が成立したとしてもそれなりのお金が動きますので勘の良い配偶者であれば気が付きます。

むしろ請求書が届く前に正直に話をして謝罪し、解決に向けて協力を仰ぐ方がプラスの場合だってありえます。

それで愛想を尽かされて出て行かれたらそれはそれで仕方がありません。まさに自業自得です。

今回は割と精神論が中心になってしまいましたが、次回以降も請求を受ける側として知っておいてもらいたいポイントを紹介していきます。

不貞(不倫)問題の解決までの流れ①~請求する側の話~

2015-06-11

最近、配偶者の様子がどうもおかしい。

色々と調べてみるとどうやら浮気をしているようだ。

今後どうしたものか?

典型的な不倫にまつわる法律相談に来られた方の冒頭部分はだいたいこのような感じで入ります。

そして話をよくよく聞いていくと、

浮気相手からお金はとれるのか?

浮気をした配偶者と離婚はできるのか?若しくは浮気相手と金輪際、接触しないようにできないか?

という質問に着地することが多いです。

不倫(不貞)の態様のみならず、家族構成から不倫が発覚するまでの経緯も千差万別です。

まったく同じ事実関係の不倫問題というのはありえません。

それでも不倫や浮気といった男女トラブルの事件を嫌になるくらい処理しているとある程度の共通項や解決までの大まかな流れというのが見えてきます。

このコラムでは「不倫(不貞)の立証」というテーマを中心に解決までの流れをお話していきたいと思います。

まず私も法律家の端くれですから相談者のお話を鵜呑みにするわけにはいきません。

必要な事実関係の聴き取りを終えたら、次に相談者の方のお話を裏付ける証拠がどこまで揃っているのかをお聞きします。

不倫、法律用語では不貞(配偶者と異性との間の性的行為)といいますが、私が思うに「これなら不貞の証拠として十分だろう。」といえるハードルは意外に高いです。

といいますのも職業上、やはり相手方がシラを切ってきたときのことをどうしても考えてしまうからです。

相手方がシラをきりとおして万が一、裁判沙汰になった場合、不貞があったことを証明しないといけないのは請求する側です。

なのでなるべく相手方が警戒する前に秘密裏に証拠を固めておいた方が良いという意識が働くのです。

典型的な例を一つあげますと、浮気の証拠としてメールやSNS上のやりとりが出てくることがあります。

ストレートに性体験の感想を述べているものもあれば、二人の間でしか通じない隠語を用いて会話を楽しんでいるものもあります。

ただ二人の親密なメールを見つけて鬼の首をとったかのごとく「浮気をしたな!」と迫るのはちょっと待った方がよい場合もあります。

例えば往生際が悪く(あるいは本当に)「想像の翼を広げて会話を楽しんでいただけだ。」と反論された場合、貴方ならどうされますか?

「何を馬鹿な。」「見れば誰でもわかる。」と問い詰めても頑強に否認されては話が先に進みません。

結局、相手は浮気を認めないままうやむやに終わってしまう、というパターンもあるでしょう。

また、本当に浮気をしていた場合は相手に警戒心を抱かせ証拠隠滅に走らせることにもなりかねません。

こうした場合も想定して、時間と費用と労力と忍耐が許す限り、二の矢、三の矢の証拠を用意しておくのがベターかと思います。

私の感覚からいうとメールやSNSのみの立証ではどうしても決め手に欠けるところがあります。

もちろんメールやSNSのやりとりを配偶者に見せて正攻法で事情を聴取してみたところ素直に自白することもあるでしょうが、夫婦の信頼関係とも絡んできますのでケースバイケースといえます。

私の場合、一般的な方針として浮気発覚の初期段階であれば事案ごとに追加の証拠収集をお勧めすることが多いです。

とにもかくにも浮気メールやSNSのやりとりはきちんと写真などで撮影して保存しておきましょう。

~次回に続く~

男女間の紛争④(へそくり編)

2015-03-16

豚さん

さて、上の写真に写っているのは私の事務所にあるヘソクリ用ステルス・セーフガード・ポーク通称「黄金の豚さん貯金箱1号」です。

黄金のブタさんのお腹の中には私が毎日、コツコツと貯めた小銭と夢がパンパンに詰まっています。

私のように家族に内緒でヘソクリをされている方は多いと思われます。

ヘソクリをされている方にそのヘソクリは誰のものですか?と質問すると十中八九「私がやりくりしたお金だから私のものだ!」という答えが返ってくると思います。

ですが法律的に果たしてそう言い切れるのでしょうか。。。(゜-゜)

夫婦間の財産について規定している条文を確認してみましょう。

民法・第762条(夫婦間における財産の帰属)
①夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。

上記条文を読むと、どうやら夫婦の一方だけが所有する「特有財産」とやらがあるみたいです。平たく言うと男女が婚姻したことで、ありとあらゆる財産が夫婦の「共有財産」(夫婦が協力して形成した財産)になるわけではありません。

では特有財産とは具体的にどのような財産をいうのでしょうか??

まず、夫婦の一方が婚姻前から有していた財産(預貯金、保険、自動車など)は特有財産として「私のものだ!」といえるようです。
上記特有財産は婚姻の前後で区別するので割と明確に線引きができそうですね。

問題は「婚姻中自己の名で得た財産」でしょう。
文言を素直に読むと、婚姻中に自分の名前で取得した財産は全て自分のものにして良いことになりそうです。

これを突き詰めると夫(又は妻)が妻(又は夫)の財産を使って好き放題、自分名義の財産を増やしたとしてもその者の特有財産となってしまいます。
これはさすがに不合理と言わざるを得ないでしょう。

判例も「自己の名で得た財産」については、単純に名義のみで判断するのではなく、それを得るに至った事情や原資の出所を踏まえて特有財産になるのか否かを判断しています(最判昭和34年7月14日民集13巻7号1023頁参照)。

特有財産としてよく見かけるものは親の遺産や贈与により取得した財産です。これは夫婦が協力して得た財産とはいえませんし、名実共に夫婦の一方が所有する財産と言われても仕方がないように思えます。

以上を踏まえてヘソクリの所有者について考えてみます。

婚姻前からコツコツと貯めていたヘソクリであれば「私のものだ!」といえそうです。

婚姻中の場合はケースバイケースになりそうですが、家計をやりくりしてねん出したヘソクリをただちに特有財産として「私のものだ!」と主張するのは難しいかもしれません。というか相手が黙ってはいないでしょう。

とすると、私のヘソクリの帰属先は。。。考えないことにしました。

ちなみに夫婦どちらの財産かが不明な場合は夫婦の共有財産と推定されます(民法762条2項)。ただし、あくまで推定ですので特有財産であると立証してこれを覆すこともできます。

男女間の紛争③(夫婦の約束事)

2015-03-06

どんな仲の良い夫婦でも喧嘩はしますよね?

喧嘩をしたことがない、と公言する芸能人の方もおられますが、あれは嘘です(キッパリ(゜-゜))。

もしくは当事者が喧嘩と思っていないだけで傍からみれば立派な喧嘩をしているはずです。

で、皆さんもなんやかんや仲直りをするために「今度、○○買ってあげるから!」とか「今度、○○へ旅行へ連れて行くから。」と迂闊にも約束をした経験がありませんか?

そして喉元過ぎればなんとやらで結局、約束をうやむやにしようとして怒られた経験がありませんか?(ない!と断言できる貴方には、このコラムの知識はまったく必要ありません。)

それでは相手から「約束を守ってよ!」と迫られ、困ってしまった貴方を救う法律があるのでしょうか?

それがあるんです(゜-゜)夫婦間の約束事に関しては次の条文があります。

民法・第七百五十四条(夫婦間の契約の取消権)

夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

この条文を盾に約束を取り消す!と主張すれば解決!?のようにも思えます。が、よく検討してみましょう。

条文には「婚姻中」とあるので文言を素直に読むと婚姻期間中にある夫婦の約束はいつでも取り消すことができそうです。

この条文が規定された背景には、夫婦という親密な間柄での約束事は、赤の他人との約束と比較して履行に向けた意思が弱いだろうという経験則があります。

そうすると親密ではない完全に冷え切った夫婦間の約束事にも同条の適用があるとするとおかしなことになります。この点、判例では「婚姻中」とは夫婦が円満な状態にあることを求めており、夫婦間に紛争が生じ婚姻関係が実質的に破綻しているときの約束事や、取消権の行使時に夫婦関係が実質的に破綻しているときは行使できない、とされています。

その結果、例えばパートナーの不倫が発覚し、離婚をすることが避けられず、慰謝料など諸条件の合意がまとまったのに上記条文を根拠に一方的に約束を反故にすることはできません。

ここで勘の良い方はお気づきになられたと思いますが、民法754条は夫婦関係が円満なときにしか取消権を行使できないのであまり意味はない条文なのです。

だって円満な夫婦の間で約束を取り消す、取り消さないだのと法律論で揉めることはまずありませんからね。

話を戻しますと、法律論をたてにして「○○を買ってやる!」などの約束を取り消すのは新たな夫婦間の紛争の火種になるのであまりお勧めできません。

できないことは素直にできないと言って謝るのが最善の策だといえます。

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