誹謗中傷記事を記載した者の特定

 

いわれのない誹謗中傷の書き込みをされた被害者が、書き込みを行った加害者(犯人)を特定する流れについて見ていきましょう。

こうした問題に対処するための法律としていわゆるプロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)が規定されています。

プロバイダ責任制限法は被害者のプライバシーや名誉といった権利又は法的利益と加害者(書き込んだ者)の表現の自由や通信の秘密などの権利のバランスをとるべく厳格な要件の下で、発信者(書き込んだ者の)情報の開示を認めています。

ここではインターネット掲示板に誹謗中傷の書き込みをされた被害者を例にとっておおまかな流れについてご説明します。

まず押さえておくべき3つのキーワードとして「経由プロバイダ」「コンテンツプロバイダ」「IPアドレス」があります。

順に分かり易く説明してきますと「経由プロバイダ」とは私たちのPCをインターネットへと接続してくれるサービスを行っている者をいいます(OCN、Yahoo!BB、So-netなど)。

次に「コンテンツプロバイダ」とはインターネット上でHPやネット掲示板といったサービス環境を提供してくれている者をいいます(例えばサイバーエージェントやLINE(株)など)。 

つまり、私たちは「経由プロバイダ」を通してインターネットの世界に飛び込み、「コンテンツプロバイダ」が提供しているネット上のサービスを楽しんでいるのです。
 
最後にインターネット上では私たちが普段使っているPCは「○○さんのPC」や「○○県△市のPC」といった形で特定・識別されているわけではありません。私たちはPCをインターネットにつなげるごとに経由プロバイダから「IPアドレス」と呼ばれる数字を割り当てられて識別されています。ある時刻にインターネットに接続したことで割り当てられた「IPアドレス」が同じ時刻に別のPCにも割り当てられるということは通常ありません。

肝心の加害者の特定の方法ですが、いわれのない誹謗中傷を掲示板に書き込まれた被害者はプロバイダ責任制限法に規定された要件を満たしていることを主張・立証して、掲示板を管理する「コンテンツプロバイダ」に対しプロバイダ制限責任法に基づいて発信者情報開示請求権を行使して、書き込んだ加害者(犯人)のIPアドレス・タイムスタンプ(書き込み時刻)・氏名・住所などの公開を求めます。会員制のコンテンツ(掲示板)であれば、書き込んだ者の氏名や住所を把握していることがありますので、上記請求の段階で加害者を特定することができる可能性が高いです。

しかし、加害者が経由プロバイダを経由してコンテンツプロバイダのサービスを利用していた場合、コンテンツプロバイダが把握しているのは経由プロバイダが割り当てた加害者PCのIPアドレスやタイムスタンプといったアクセス情報となりますので加害者の氏名や住所まではコンテンツプロバイダにはわかりません。
 
そこで、被害者は次の段階として経由プロバイダに対し上記アクセス情報をもとに当該アクセス者の契約者情報(氏名・住所・電話番号など)の開示請求を求めるのです。
 
こうして被害者はコンテンツプロバイダに対する第一次請求、経由プロバイダに対する第二次請求を行うことで加害者を特定することになります。

なお、アクセス情報はプロバイダによっては短期間(2~3週間程度)で消去されてしまうところもあるので経由プロバイダへの発信者情報の開示請求の際に発信者情報の保存を求め、あるいは発信者情報の消去を禁止する仮処分を裁判所に申し立てることが考えられるでしょう。

 

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