男女間の紛争③(夫婦の約束事)

2015-03-06

どんな仲の良い夫婦でも喧嘩はしますよね?

喧嘩をしたことがない、と公言する芸能人の方もおられますが、あれは嘘です(キッパリ(゜-゜))。

もしくは当事者が喧嘩と思っていないだけで傍からみれば立派な喧嘩をしているはずです。

で、皆さんもなんやかんや仲直りをするために「今度、○○買ってあげるから!」とか「今度、○○へ旅行へ連れて行くから。」と迂闊にも約束をした経験がありませんか?

そして喉元過ぎればなんとやらで結局、約束をうやむやにしようとして怒られた経験がありませんか?(ない!と断言できる貴方には、このコラムの知識はまったく必要ありません。)

それでは相手から「約束を守ってよ!」と迫られ、困ってしまった貴方を救う法律があるのでしょうか?

それがあるんです(゜-゜)夫婦間の約束事に関しては次の条文があります。

民法・第七百五十四条(夫婦間の契約の取消権)

夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

この条文を盾に約束を取り消す!と主張すれば解決!?のようにも思えます。が、よく検討してみましょう。

条文には「婚姻中」とあるので文言を素直に読むと婚姻期間中にある夫婦の約束はいつでも取り消すことができそうです。

この条文が規定された背景には、夫婦という親密な間柄での約束事は、赤の他人との約束と比較して履行に向けた意思が弱いだろうという経験則があります。

そうすると親密ではない完全に冷え切った夫婦間の約束事にも同条の適用があるとするとおかしなことになります。この点、判例では「婚姻中」とは夫婦が円満な状態にあることを求めており、夫婦間に紛争が生じ婚姻関係が実質的に破綻しているときの約束事や、取消権の行使時に夫婦関係が実質的に破綻しているときは行使できない、とされています。

その結果、例えばパートナーの不倫が発覚し、離婚をすることが避けられず、慰謝料など諸条件の合意がまとまったのに上記条文を根拠に一方的に約束を反故にすることはできません。

ここで勘の良い方はお気づきになられたと思いますが、民法754条は夫婦関係が円満なときにしか取消権を行使できないのであまり意味はない条文なのです。

だって円満な夫婦の間で約束を取り消す、取り消さないだのと法律論で揉めることはまずありませんからね。

話を戻しますと、法律論をたてにして「○○を買ってやる!」などの約束を取り消すのは新たな夫婦間の紛争の火種になるのであまりお勧めできません。

できないことは素直にできないと言って謝るのが最善の策だといえます。

 

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