架空請求業者からメールが届きました。ドキドキ。

2014-10-09

本日、私の携帯に以下のようなメールが届きました。

どうやら私に対して訴訟が提起されたようです。

う~ん、身に覚えがまったくありません。

ですが万が一ということがありますので、よくよく内容を吟味したいと思います。

○民事裁判事前告知○
__________

■訴訟番号  平成26年(コ)第654号

■訴訟取下げ期日 平成26年10月10日 (金曜日)

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この度、貴殿がご利用された電子通信使用料(コンテンツ利用料金)債務不履行により、原告側(契約通信運営会社)が提出した『民事裁判』の訴状を、管轄裁判所が受理した事をご報告いたします。

ご連絡なき場合、下記の訴訟取下げ期日を経て、特別送達による出廷命令が届きますので記載期日に出廷していただきます様、宜しくお願い致します。

裁判後の措置として執行証書の交付のもと給与差押さえ、及び動産物・不動産の差押さえを執行官の立会いのもと強制執行させて頂きます。
(※尚、故意に放置しておくと、原告側の言い分どおりの判決が下されます。)
訴訟内容及び、訴訟取下げ手続きに関しましては、受付時間内に担当職員までお問い合わせ下さい。
総合消費者民法特例法による法務省許可通知のため個人情報保護法上 、ご本人様からご連絡頂ますようお願い申し上げます。

尚、当局は原告側からの訴訟通達・訴訟の正当性を確認する機関であり、当局が貴殿に対して訴訟を提起するのではありません。

※昨今、架空請求業者の新しい手口として少額訴訟手続きを利用して実際に訴訟を提起する事例が増えてきていますのでご注意ください。

__________
〓民事司法事務総局〓
【住所】〒100-0013 東京都千代田区霞が関1丁目1-2
【TEL】 ○○○
【担当】○○○
【受付時間】 平日 8:30~18:00
  土曜日 8:30~17:00
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
(※ご連絡に際しては、部署・担当名をお伝えください。尚、電話回線が混み合ってる場合は繋がりにくい場合もございますのでご了承下さい。 )

一見すると法務省だの、それらしい法律名だの、架空請求業者の手口の紹介だのと真実味がありますね。

皆さんのなかには、こうしたメールを受け取ると心配になって連絡先にすぐにTELしたくなる方がいると思います。

ですが待ってください。落ち着いてメールを読んでみると色々と突っ込みどころが満載だとは思いませんか??

少なくとも私なんかに言わせるともう出だしから怪しさ満点です。

それでは具体的に見ていきましょう。

○民事裁判事前告知○
__________

■訴訟番号  平成26年(コ)第654号

■訴訟取下げ期日 平成26年10月10日 (金曜日)

→まず私は約3年間、弁護士をしておりますが「民事裁判事前告知」なる制度なんて聞いたことがありません。

また、民事訴訟が提起されましたとメールでお知らせしてくれるサービスがあったことを初めて知りました。

上記サービスがあれば便利だと思う方もいるかもしれませんが、残念ながら日本の裁判所がメールで当事者と連絡を取り合うことはあり得ません。。

事件番号として(コ)というものがあることも私は知りませんでした。

しかも10月9日に訴訟を提起したのに、その翌日には訴訟の取り下げ(訴訟をはじめからなかったことにする、という意味。)期日があるそうです。

もはや何がしたいのかわかりません。

メールの送り主がいう「裁判所」とは本当に日本の裁判所なのでしょうか?? 

この度、貴殿がご利用された電子通信使用料(コンテンツ利用料金)債務不履行により、原告側(契約通信運営会社)が提出した『民事裁判』の訴状を、管轄裁判所が受理した事をご報告いたします。

→私が利用したというコンテンツの内容がまったく記載されていません。これでは債務の内容がわかりませんね。

使用料の請求をするのですから当然に「民事裁判」だと思うのですが、、、他にどんな裁判で使用料を請求するつもりなのか教えて欲しいです。

また、管轄裁判所が受理した、とありますがどこの裁判所かがわかりません。

そして受理(受け付けた)ことを連絡してくる理由がわかりません。

ほっておいても裁判所から書類が届くのですから事前に連絡する意味がどこにあるのでしょうか??

ご連絡なき場合、下記の訴訟取下げ期日を経て、特別送達による出廷命令が届きますので記載期日に出廷していただきます様、宜しくお願い致します。

→なるほど了解しました。ですがどこに出廷すれば良いのか、また連絡をする必要性がまったくわかりません。

訴訟取り下げ期日なる日が何をする日なのかもわかりません。

裁判後の措置として執行証書の交付のもと給与差押さえ、及び動産物・不動産の差押さえを執行官の立会いのもと強制執行させて頂きます。

→どうやらこのメールの送り主の頭の中では裁判をする前から私が完全に敗訴する予定になっているようです。

(※尚、故意に放置しておくと、原告側の言い分どおりの判決が下されます。)

→ここでいう「放置」とはいったいなにを指しているのでしょうか??

請求の内容もわからず、どこの裁判所かもわからないのでは対応の仕様がありません。

読めばよむほど理解できないことがたくさんあります(←こう思わせて連絡を取らせようとするのが架空請求業者の手口です)。

訴訟内容及び、訴訟取下げ手続きに関しましては、受付時間内に担当職員までお問い合わせ下さい。

総合消費者民法特例法による法務省許可通知のため個人情報保護法上 、ご本人様からご連絡頂ますようお願い申し上げます。

→実在する法律名やそれらしい法律名や「法務省」といった公の機関名が書かれています。

ですが、これだけで信用してはいけません。なんで訴訟手続に関して裁判所ではなく、どこの馬の骨ともしれない担当職員に問い合わせないといけないのでしょうか??

だいたい「○○法による●●通知のため○○法上」なんてくだりは文法的にもおかしく、もはや意味不明です。

尚、当局は原告側からの訴訟通達・訴訟の正当性を確認する機関であり、当局が貴殿に対して訴訟を提起するのではありません。

→それではいったい何のためにメールしてきたのかまったく分かりません。これまでのメールの内容と矛盾しています。

しかも原告側からの訴訟の正当性が既に確認されているのであればいったい何のために裁判をするのでしょうか??

※昨今、架空請求業者の新しい手口として少額訴訟手続きを利用して実際に訴訟を提起する事例が増えてきていますのでご注意ください。

→これは事実です。裁判所からの通知等をほっておくと思わぬ不利益を蒙ることがありますので、裁判所からの通知が届いた場合はきちんと確認をしてください。

こうして虚実を混ぜて信用させようとするのが架空業者の手口です。

__________
〓民事司法事務総局〓
【住所】〒100-0013 東京都千代田区霞が関1丁目1-2
【TEL】 ○○○
【担当】○○○
【受付時間】 平日 8:30~18:00
  土曜日 8:30~17:00
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(※ご連絡に際しては、部署・担当名をお伝えください。尚、電話回線が混み合ってる場合は繋がりにくい場合もございますのでご了承下さい。 )

→ご丁寧に合同庁舎の住所を記載しています。ですが実際に行ってみてもそんな部局は存在しません。
また、裁判所を含めて官公庁は本来、土日はお休みなのですが、どうやらこのメールを送った民事司法事務総局のスタッフは土曜日も出勤もしているようですね。ご苦労さまです。

とまぁ、こんな感じでよく読むと内容は支離滅裂ですし、法務省のHPにも以下のような注意喚起がなされていますので私に届いたメールが架空請求であることは間違いないです。

最近,「民事裁判告知」と題し,「民事裁判の訴状を,管轄裁判所が受理したことを報告いたします。」等との記載があるEメールが送付されているとの情報が法務省に多数寄せられています。
この中には「法務省認定法人」と法務省の名称を無断で使用していますが,これらの団体と法務省とは一切関係がありません。
文面には,架空の「訴訟取り下げ期日」等が記載されており,存在しない法律名等を書き立てて法的根拠があるように見せかけて不安をあおり,訴訟取り下げ等についての連絡を求めるものがありますので,くれぐれもご注意ください。この他,心当たりのないメールに法務省が発信元であるかのような記載がある場合には,放置せずに法務省に御確認ください。

○過去の不正に使用された法務省の名称及び法務省と類似した名称
  「法務省管轄機構民事訴訟管理局」,「民事訴訟管理局」,「民事訴訟通達センター」,「法務省認定法人民事訴訟総合協会」

皆さんに届いた請求メールにそれらしい法律名や機関名が記載されていたとしてもすぐに信じるのではなく、その内容をよく吟味してください。

そして請求メールに記載された連絡先に電話やメールをするのは控えましょう。

たいていは連絡先に問い合わせた段階で氏名や住所といった個人情報を聞かれ、答えてしまうことで架空業者に格好の獲物にされてしまう可能性が極めて高いです。

対応などに迷ったときはお近くの消費者センターや弁護士会にご相談ください。

 

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