婚姻費用≠養育費??
法律相談でたまに相談者の方が「婚姻費用」と「養育費」をごっちゃにして使われている場面に遭遇することがあります。
背景にはどちらも旦那様が奥様に支払う費用というイメージがあるせいかな、と思ったりもしています。
ここで同じようなものですよ、と説明してしまうのはあんまりなので法律の考え方をできるだけ簡単に押さえておきたいと思います。
婚姻費用については民法760条に規定があります。
(婚姻費用の分担)第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
他方、養育費の根拠条文については諸説ありますが、私は民法877条が根拠になると考えております。
(扶養義務者)第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
さて、この条文を見比べて何が異なっているのか分かりますか??
おおまかに言うと婚姻費用は婚姻生活において必要な費用(生計費・交際費・利用費等)や子の養育費(学費・出産費等)といった婚姻から生ずる費用を意味しています。
ということはたとえ夫婦が別居に至ったとしても離婚していなければ、やはり生活に必要な費用や養育費といった婚姻費用を義務者は負担しなくてはなりません。
夫婦が円満に暮らしている間は婚姻費用の問題は表面に出てこないと言ってもよいでしょう(一般に家庭のお財布は夫婦で一つという感覚がありますよね??)。
婚姻費用の問題が顕在化する場面としてよく見られるのは夫婦が仲たがいをして別居したときでしょう。
この場合の婚姻費用は夫婦相互の年収、資産の有無、子の養育状況などを考慮して、夫が妻に対して別居後の婚姻費用を支払う場面が多くなります。
婚姻費用の金額が当事者間での話し合いでまとまらないときは裁判所の調停あるいは審判で決めていくことになります。
裁判所での話合いでは婚姻費用の算定表が重要な参考資料として使われています。
これに対して養育費は未成熟子(未成年の子)が両親に対して養育にかかる費用を請求することができる、ということが出発点になります。
両親が婚姻期間中であろうがなかろうが両親は子に対する扶養(養育)義務を負っています。
両親が離婚(あるいは別居)をしますと子を養育することになる親とそうでない親との間での負担に不均衡が生じますよね。
そこで子を養育している親が、子を養育をしていない親に対して「養育費」の支払いを請求することになります。
養育費の金額が当事者間で話し合っても決まらない場合は話し合いの場を裁判所に移すのは婚姻費用と同様です。
このように法律上の根拠は婚姻費用と養育費で異なりますが、お金をもらう側の生活の保障という役割は共通して見られます。
また、婚姻費用は子だけでなく妻(あるいは夫)の生活保障の役割もありますので一般的には婚姻費用の方が高くなります。
それから婚姻費用も養育費も金額にはやはり限界があります。
もらう側は現実に必要となるお金を100%もらえないことがある、ということを頭に入れておいてください。