男女間の紛争④(へそくり編)
さて、上の写真に写っているのは私の事務所にあるヘソクリ用ステルス・セーフガード・ポーク通称「黄金の豚さん貯金箱1号」です。
黄金のブタさんのお腹の中には私が毎日、コツコツと貯めた小銭と夢がパンパンに詰まっています。
私のように家族に内緒でヘソクリをされている方は多いと思われます。
ヘソクリをされている方にそのヘソクリは誰のものですか?と質問すると十中八九「私がやりくりしたお金だから私のものだ!」という答えが返ってくると思います。
ですが法律的に果たしてそう言い切れるのでしょうか。。。(゜-゜)
夫婦間の財産について規定している条文を確認してみましょう。
民法・第762条(夫婦間における財産の帰属)
①夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
上記条文を読むと、どうやら夫婦の一方だけが所有する「特有財産」とやらがあるみたいです。平たく言うと男女が婚姻したことで、ありとあらゆる財産が夫婦の「共有財産」(夫婦が協力して形成した財産)になるわけではありません。
では特有財産とは具体的にどのような財産をいうのでしょうか??
まず、夫婦の一方が婚姻前から有していた財産(預貯金、保険、自動車など)は特有財産として「私のものだ!」といえるようです。
上記特有財産は婚姻の前後で区別するので割と明確に線引きができそうですね。
問題は「婚姻中自己の名で得た財産」でしょう。
文言を素直に読むと、婚姻中に自分の名前で取得した財産は全て自分のものにして良いことになりそうです。
これを突き詰めると夫(又は妻)が妻(又は夫)の財産を使って好き放題、自分名義の財産を増やしたとしてもその者の特有財産となってしまいます。
これはさすがに不合理と言わざるを得ないでしょう。
判例も「自己の名で得た財産」については、単純に名義のみで判断するのではなく、それを得るに至った事情や原資の出所を踏まえて特有財産になるのか否かを判断しています(最判昭和34年7月14日民集13巻7号1023頁参照)。
特有財産としてよく見かけるものは親の遺産や贈与により取得した財産です。これは夫婦が協力して得た財産とはいえませんし、名実共に夫婦の一方が所有する財産と言われても仕方がないように思えます。
以上を踏まえてヘソクリの所有者について考えてみます。
婚姻前からコツコツと貯めていたヘソクリであれば「私のものだ!」といえそうです。
婚姻中の場合はケースバイケースになりそうですが、家計をやりくりしてねん出したヘソクリをただちに特有財産として「私のものだ!」と主張するのは難しいかもしれません。というか相手が黙ってはいないでしょう。
とすると、私のヘソクリの帰属先は。。。考えないことにしました。
ちなみに夫婦どちらの財産かが不明な場合は夫婦の共有財産と推定されます(民法762条2項)。ただし、あくまで推定ですので特有財産であると立証してこれを覆すこともできます。