反則金と罰金の違いって何?分かりにくいよね。
交通違反をした際に「キップを切られた~(´;ω;`)」とか、「罰金を〇〇円、払ったよ(# ゚Д゚)」といった会話をしたことがありませんか?
ちなみに僕は一度も交通違反を犯したことがないので、そんな会話をしたことがありません。
さて、皆さんは冒頭の会話に出てくる「キップ」や「罰金」の内容について正確に理解はできているでしょうか?
僕もあんまり正確に理解していなかったのですが、「反則金」に関して法律相談が寄せられたので改めて勉強をした次第です。
「反則金」をググれば大体の内容は分かるのですが、一応は法律の仕事をして食べているので、それらしく法律を交えて確認していきたいと思います。
このコラムでは身近な例として「速度違反」を扱います。
まず、車を運転する際のルールは主として「道路交通法」という法律で決められています。
道路交通法第22条(最高速度)の第1項をみてみると、
車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。
と、いわば当たり前のルールが書いてあります。
それでは、最高速度に違反した運転手さんはどうなるのでしょうか?
道路交通法の第118条に、以下の罰を受けると書いてあります。
次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
一 第二十二条(最高速度)の規定の違反となるような行為をした者
「懲役」というといかにも悪いことをした人が受ける罰(刑罰)というイメージがすぐにわきますよね?
そして、懲役と並んで「罰金」も立派な刑罰です。
罰金刑に処せられると、これはもう立派な?「前科持ち」となってしまいます。
過去の経歴の賞罰欄に「罰金前科1犯」がつくわけですから、例え前科の内容が速度違反であっても気持ちの良いものではありません。
た・だ・で・す・ね、
この日本において人に刑罰を科す際には、きちんとしたルールにのっとって行われなければならないとされています。
お隣の国のように「刈上げマン」の一存で、粛清され、マシンガンでハチの巣にされたり、犬に食われたりするような無法地帯ではないのです。
刑事裁判手続きの細かい説明は省きますが、裁判所で交通違反事件を審理し、刑罰を科すことはそれなりに大変な作業です。
内閣府の発表によると平成25年度における車両等の道路交通法違反(罰則付違反)の取締り件数は約740万件あり、最高速度違反が約205万件あるとされています。
(内閣府HP 平成25年度 交通事故の状況及び交通安全施策の現況より)
これだけ膨大な道路交通法違反事件が全国の裁判所に持ち込まれたら一体、どうなるでしょうか?
おそらく裁判所は機能不全に陥るでしょう。
裁判所が、真夜中にも開廷するような24時間コンビニ化したとしてもきっと処理は追いつきません。
なにより僕は真夜中まで裁判なんかしたくはありません。
で、考え出されたのが「反則金」という制度です。
これは、道路交通法で定められた「反則行為」(比較的軽微な道路交通法違反行為)をした場合に、刑事手続きに先行して事件を処理してしまう制度です。
反則金を納付することで、当該道路交通法違反について公訴を提起されない、つまりは刑事裁判にかけられない、ということは前科がつかない!裁判も開かなくて良くて手間いらず!な制度です。
本コラムで扱っている速度違反の内、比較的軽微な「反則行為」とされているのは、道路交通法によると、
第百十八条第一項第一号又は第二項の罪に当たる行為※速度違反の罪。但し・・・⇒(第二十二条の規定によりこれを超える速度で進行してはならないこととされている最高速度を三十キロメートル毎時(高速自動車国道等においては四十キロメートル毎時)以上超える速度で運転する行為を除く)
一般道で30キロ未満、高速道路で40キロ未満の速度違反をいいます。
ちなみに反則金の金額は、普通自動車4万円、大型自動車5万円となっています。
そして、反則金を納めると道路交通法128条(反則金の納付)第2項において、
2 前項の規定により反則金を納付した者は、当該通告の理由となつた行為に係る事件について、公訴を提起されず※刑事裁判にかけないという意味※、又は家庭裁判所の審判に付されない。
ことになり、公訴を提起されない以上、刑罰を科せられようがないので前科はつきません。
手続的には反則行為に及んだ人には道路交通法に定める事項が記載された「告知書」が交付されます。
同法第百二十六条(告知)
警察官は、反則者があると認めるときは、次に掲げる場合を除き、その者に対し、速やかに、反則行為となるべき事実の要旨及び当該反則行為が属する反則行為の種別並びにその者が次条第一項前段の規定による通告を受けるための出頭の期日及び場所を書面で告知するものとする。
告知書の色は警察の様式上「薄青色」と決まっており、これが「青キップ」と呼ばれる由来です。
ところで、反則行為(速度違反)の定義を反対解釈すれば、一般道路で時速30キロオーバー、高速道路で40キロオーバーの速度違反は反則行為に当たらず、「反則金」の制度で救済されないわけです。
この場合は「青キップ」よりも重い「告知票」、通称「赤キップ」が切られ、刑事裁判の手続きのレールの上に乗せられます。
同じ速度違反といっても悪質さには差があるでしょうから、簡易迅速に事件を処理できる反則金制度自体、私は賛成です。
では、取締官に反則行為であると咎められた場合、必ず反則金を支払わなければならないかというと、そうではありません。
裁判を受ける権利は憲法上保障されていますので、
日本国憲法第三十二条 何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
納得がいかない方は反則金を納めずに刑事裁判を受けて争って頂くことも可能です。
というわけで「罰金」も「反則金」も道路交通法に違反した結果、国にお金を納めるところは同じなのですが、「刑罰」という観点からみると意味合いが大分、違うことはお分かりいただけたでしょうか?
ちょっと小難しくなってしまいましたが、要は安全運転に努めて、反則金や罰金とは縁遠い、楽しいカーライフを送ろうということが言いたかったのです。