勝手に出て行った妻(夫)に対する生活費の支払いについて。

2015-07-01

ある日、あなたが自宅に帰ると机の上に「もうあなたとはやっていけません。」「探さないでください。」との書置きが残されていました。

いつもなら寝床で可愛く寝息を立てている子どもの姿もありません。

茫然自失の貴方に追い打ちをかけるように配偶者からすぐに離婚協議の申入書が届きました。

そこには離婚が成立するまでの生活費を支払うように書いてありました。

落ち着きを取り戻した貴方は段々と腹が立ってきました。

「なんで話し合いもせずに出て行った配偶者に生活費を払わないといけないんだ!」「納得いかない!」そんな心の声が駄々漏れです。

本件のケースように夫婦が別居に至った場合でも婚姻生活は継続しておりますので、各自の生活費や子どもの養育費は夫婦がお互いに分担しなくてはなりません。

なお、このコラムでは各自の生活費や子どもの養育費をまとめて「婚姻費用」と呼ぶことにします。

婚姻費用は法律上、各自の資産、収入その他一切の事情を考慮して分担することとされていますが(民法760条)、実務上は婚姻費用の算定表が重要な参考資料として用いられています。

それではご相談者の方が最も不満に思っているであろう「別居に至る経緯」は、婚姻費用の分担額に影響を与えるのでしょうか?

答えはYESでもあり、NOでもあります。まあ早い話がケースバイケースですね(゜-゜)

夫婦は本来、同居してお互いに助け合って生活していく法律上の義務があります(民法752条)。

婚姻費用を分担する義務は夫婦の同居義務・扶助義務が姿・形を変えたものだといえます。

そうすると不倫相手と駆け落ちしたり、家族を捨てて自分探しの旅に出るなど夫婦の同居義務・扶助義務に反してやりたい放題やっている者からの婚姻費用の請求を認めるというのは筋が通らない話です。

上記のように婚姻費用を請求する側がもっぱら別居の原因を作ったような場合には、婚姻費用が減額されたり、それこそ事情次第では婚姻費用の請求が認められない場合もあります。

もっとも通常は別居に至る原因に子どもは無関係ですから、婚姻費用の内、子どもの養育に関する費用は分担を免れることはできません。

そんなわけで本件のケースでは別居の原因はもっぱら相手にあるとして、子どもの養育費を除いた上で、生活費の負担を拒否するという選択肢がとれるかもしれません。

ただ私であれば、よっぽどの事情がない限りは算定表を参考にして適正妥当な金額を算出し、当該金額をキッチリ支払っておいた方が良い、と助言すると思います。

私の経験上、その方が長い目で見たときに紛争の早期解決に結びついたり、離婚という結末を回避するきっかけになることがあるからです。

何も一から十まで我慢しろと言っているわけではありません。

勝手に出て行かれて面白くないという気持ちはよく分かりますが、相手に対する不満を発散する方向を間違えてはいけない、と私は言いたいのです。

 

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