ペットに関する法律①「動物虐待の罰則規定」

2018-07-10

本年3月に、動物愛護団体が、福井県坂井市内の「子犬工場」の事業者を動物虐待の容疑で刑事告発する方針であることが写真入りで新聞報道されました。

報道写真には、犬たちが狭いゲージに押し込まれているシーンが写っており、見ていてすごく胸が痛みました。

違法か適法かという問題以前に、よくここまで命を軽く扱えるものだと憤りを感じました。

と同時に、「動物虐待の容疑で刑事告発」という見出しを読んで、一体、日本ではどのような法律が動物の虐待を禁止しているのかがすごく気になりましたので調べてみました。

今回、ポイントになる法律は「動物の愛護及び管理に関する法律」(以下、「法」といいます。)です。

動物の飼育や管理について定めた法律の中では、最も大事なものではないでしょうか。

今回は動物虐待を防止するための「罰則」を中心に確認してみたいと思います。

動物の虐待に関する罰則規定は法第44条に規定されています。

第六章 罰則
第四十四条 愛護動物みだりに殺し、又は傷つけた者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
2 愛護動物に対し、みだりに、給餌若しくは給水をやめ、酷使し、又はその健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させること自己の飼養し、又は保管する愛護動物であつて疾病にかかり、又は負傷したものの適切な保護を行わないこと、排せつ物の堆積した施設又は他の愛護動物の死体が放置された施設であつて自己の管理するものにおいて飼養し、又は保管することその他の虐待を行つた者は、百万円以下の罰金に処する。
3 愛護動物を遺棄した者は、百万円以下の罰金に処する。
4 前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一 牛、馬、豚、めん羊、山羊、、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬は虫類に属するもの

罰則(虐待)規定の対象となる愛護動物として、犬、猫などが具体的に列挙されています。

また、哺乳類、鳥類、爬虫類に属するものとありますが、魚類や昆虫類は含まれてはおりません。

殺傷等について「みだりに」という縛りがかかっておりますので、牛や豚などの食用家畜の命を奪うことは、同法の罰則規定の適用対象にはならないことが読み解けます。

実際に動物虐待で刑事罰を受けている過去の裁判例をみてみますと、直近では猫を9匹殺害、4匹に傷害を負わせていたケースで懲役1年10カ月、執行猶予4年の判決が下ったものがありました(東京地裁平成29年12月12日判決・平成29年(特わ)第1985号外)

今回の坂井市内のケースについて事案の詳細は分かりませんが、仮に業者に犬を殺傷する意図がなかったとしても、狭いゲージ内で管理が不可能なレベルの大量の犬を飼育し、健康状態を害した犬がいたのであれば、犬の健康や安全を保持することが困難な場所に拘束して衰弱させたか、疾病や負傷した犬の保護を適切に行わなかったということで刑事罰の対象となる可能性は十分にあると思います。

今日はいつもより真面目な内容のコラムとなりました。

今後もこの問題からは目が離せませんので、当面の間、「動物の愛護及び管理に関する法律」について学んだことをちょこちょこと更新していきたいと思います。

 

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